動脈硬化性疾患予防ガイドライン

 動脈硬化性疾患、ことに心筋梗塞を中心とした心血管系疾患と、脳梗塞・脳卒中を中心とした脳血管障害による死亡は、日本人の死因統計上がんと並んで大きな位置を占め、死因の30%に及んでいる。
我が国の世界に先駆けた高齢化は、益々その頻度の増加が予想される。
その有効な予防、さらにその治療対策の確立は必須の課題であり急務である。

 動脈硬化の発症・進展は多様な危険因子の重なりによって引き起こされることが、Framingham研究で危険因子の概念が確立して以来多くの研究成果の蓄積により証明されてきた。
その中で、最も重要な因子として高コレステロール血症が確立しており、したがって、従来その対策に最も重点が置かれてきた。

 高コレステロール血症の診断基準については、我が国では1987年日本動脈硬化学会冬季大会でのコンセンサスカンファレンスにより、総コレステロール220mg/dL、トリグリセライド150mg/dL、HDL40mg/dLという基準値が提唱された。
しかしながら、この頃は日本人のデータからなるエビデンスが伴っておらず、その後、我が国のエビデンスに基づいた診断基準の設定がなされ、1997年に日本動脈硬化学会より「高脂血症診療ガイドライン」が発表された。
冠動脈疾患の相対危険度は欧米のデータとよく一致し、総コレステロール220mg/dLを診断基準として採用した。
また、LDLコレステロールが重要であることも強調され、総コレステロール220mg/dLに相当するLDLコレステロール値として、140mg/dLが提示された。
その後、我が国独自のいくつかの単一のコホート研究が発表され、さらに介入試験も発表され、それに基づいて2002年に「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」として改訂版が発表された。
ここではスクリーニングのための診断基準として総コレステロール220mg/dL、LDLコレステロール値140mg/dLを追認した。

 さらに2007年、日本動脈硬化学会では5年ぶりの改訂版を発表し、「高脂血症の診断基準」を「脂質異常の診断基準」とし、動脈硬化性疾患リスクの高い集団のスクリーニングの診断基準としてLDLコレステロール140mg/dLを採用し、総コレステロールについては、むしろ診断基準から除去した。

患者カテゴリーは、A、B、Cという表記をあらため一次予防と二次予防に区別し、一次予防を低リスク、中リスク、高リスクと分類した。
低リスクでは、生活習慣の改善を中心とするメッセージを重要視した。
最近、動脈硬化発症・進展の重要リスクとして位置付けられた「メタボリックシンドローム」の章を新たに設けた。
今回の改訂により、実地医家にとっても動脈硬化性疾患の対策により有用なガイドラインとして愛用していただけるものと期待するところである。

日本動脈硬化学会

理事長 北 徹

(京都大学理事・副学長・大学院医学研究科循環器内科学)